江古田の街。
さすがに学生の街だけあって、元気そうな街だった。日芸の他に武蔵野音大と武蔵大学。
西部池袋線の江古田駅ともう一つ先の桜台駅の間に3校の大学があった。

日本一の学生数を誇る日本大学。
その中の一つ芸術学部は四方を校舎に囲まれている。
中庭が唯一憩える場所だった。
総合大学の学部というより、単科大学と呼んだほうがいいかもしれない。
その小さな学部は今、新入生を迎えて活気に溢れていた。

入学式にはでなかった。
というより、大学に来たのは今日で2度目だった。別に出る必要もなかったし、それより授業が始まるまでにやっておきたいことがあった。
無理かなと思いながらバイトも決めた。
自分で受ける授業内容を計算しながら、ようやく見つけた。時間的に少しきついかもしれない。
しかし今の自分に辛いのは時間ではないと思った。

○○出版社から帰った後、アルバイトニュースを見ながらパンをかじった。
その時はまだ大学の時間割が決まってなかったから大体の時間を計算しながらのものだった。
しかし中々いいバイトはない。
ぼくはAさんからもらったメモを出した。
しかし、ここでぼくの悪い性格がでた。
確かに今日はバイトの事をのぞけば有意義な時間を過ごせた。
Aさんには感謝している。
だが・・バイトは世話になりたくない。
何故そう思ったのか・・自分でも説明ができない。
意地なのだろうか。
メモからバイトニュースに再び目を戻したとき、ぼくの中に広がった思いに愕然となった。
「あかん、普通のバイトはでけへん・・」
あらためてぼくは自分の神経を思った。

今日はかなりの量の薬を飲んだ。
たくさんの量を飲んでも、効かないときもある。
しかし、今日は不自然でなく効いた。
あまりに自然だったため、飲んでる事を忘れていた。

ぼんやりした頭の奥で、それでもぼくは懸命に手をのばしていた。
「どうすればいい?このままじゃどうにもならへん・・」
力なくバイトニュースに目をやる。
怒りより悲しさがあった。
文字がにじんで見えた。
目を閉じたぼくの心に、風が吹きぬける。
そのなかに、あの甘い髪の匂いがあった。


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